おすすめ本まとめ

戦争の心理を学ぶ本。人はなぜ戦場で人を殺してしまうのか

戦争のニュースを見るたびに思い出す本2冊の紹介です。

人を殺す奴はバカだ!と単純に否定して済ませたくなく、どちらも読んでみた覚えがあります。

ぜひのぞいてみてください。

戦争の心理を学ぶ本①『服従の心理』

ナチスのユダヤ人虐殺を筆頭に、組織に属する人はその組織の命令とあらば、通常は考えられない残酷なことをやってしまう。権威に服従する際の人間の心理を科学的に検証するために、前代未聞の実験が行われた。通称、アイヒマン実験―本書は世界を震撼させたその衝撃の実験報告である。心理学史上に輝く名著、新訳決定版。

あらすじ

最も残酷な人体実験の一つとして知られる「アイヒマン実験」の検証レポートを紹介した一冊。

実験の概略としては、

  • 被験者1、被験者2(仕掛け人)、心理学者 の3名で行われた
  • 心理学者は被験者1に、「学習における罰の効力を実験したい。あなたは先生役になり被験者2に学力テストを実施、誤答をするたびに電気ショックを与えるボタンを押してほしい」と指示。
  • 電気ショックは誤答のたびに強まる設定。テストが進むにつれ被験者2の反応も強くなり、ついには絶叫し、実験の中止を懇願するほどに。(これは演技で、実際に被験者2へ電気ショックは流れていない)
  • 被験者1は実験を観察する心理学者へ判断を仰ぐが、心理学者は一貫して「実験を中断してもらっては困ります。絶対に続行してください」を指示するのみ。
  • 以上の状況で、被験者1はどのタイミングで、権威である学者に反抗して実験の中断をすることができるか?

というもの。

一般的な感覚で見れば、「自分ならすぐに中止するけどな、、、逆に中断できない人はどれだけ邪悪な人なんだ」と感じるかと思います。しかし、実験の結果はこれに相反し、被験者全体の3分の2が最後まで実験をやり遂げたというものでした。

安楽椅子にすわった状態から、服従する被験者たちのこうした行動を糾弾するのは簡単だ。

『服従の心理』 p22

この実験は、権威が支配する状況では通常の道徳的規範は通用しないことを証明しています

戦争時における兵士の行動はもちろん、日常生活に目を落としてみても、いじめ問題などにも転用できる、今の時代なら押さえておきたい知識です。

戦争の心理を学ぶ本②『戦争における「人殺し」の心理学』

本来、人間には、同類を殺すことには強烈な抵抗感がある。それを、兵士として、人間を殺す場としての戦場に送りだすとはどういうことなのか。どのように、殺人に慣れされていくことができるのか。そのためにはいかなる心身の訓練が必要になるのか。心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあった著者が、戦場というリアルな現場の視線から人間の暗部をえぐり、兵士の立場から答える。米国ウエスト・ポイント陸軍士官学校や同空軍軍士官学校の教科書として使用されている戦慄の研究書。

あらすじ

戦争のニュースを見るたびに、「兵士たちは命令されているとはいえ、よく人殺しなんかできるな」と思ってしまいますが、その実、やはり人間は本能的に人殺しができないようにできていると本書は最初に示してくれます。

それではなぜ戦争で死者が出るのか、人を殺せない人間を兵士としてどのように育成するのか、を資料ベースで解説した本。

戦争から縁遠くなった日本ではあまり触れることのない、生々しい「殺人」の知識に触れると同時に、身近なところに「死」の問題が眠っていることにも気づかされます。(例えば本書では人形を銃撃する戦闘シミュレーションの実例と、戦闘オンラインゲームの関連性を示唆しています)

人間はやはり人を殺せない生き物なんだという希望、そんな人間を人殺しに強制させうることができるという絶望を示されることで、戦争に対する見え方が少し変わるような一冊です。

おわりに

戦争の裏側にまつわる心理学系の本を、僕が読んだ中から2冊紹介しました。

戦争する奴は馬鹿だ!と簡単に切り捨てるだけでなく、その裏にある背景を把握したうえで、批判したいです。