おすすめ本まとめ

小川洋子おすすめ小説 4選!初めての小川作品に迷っている方へ、代表作を中心に

この記事では、小川洋子の小説に興味があるけど、どこから手を付けようか迷っている方に向けて、

小川洋子の魅力を感じることのできる小説をご紹介します。

たくさん並べても迷うだけだと思うので、

  • 代表作を中心
  • 厳選して4冊のみ

のご紹介です!

小川洋子作品の特徴

特徴①文章力、表現力の高さ

僕が思う小川洋子作品の最大の特徴は、日本語の巧みさです。

ありきたりな表現ではないのに、気障に感じない。

心内描写は控えめなのに、感情が伝わってくる。

難しい言葉は使っていないのに、見たことのない表現が頻発する。

日本語を繊細に、緻密に組み立てて物語を紡いでいるのが伝わってきて、小説家の矜持を感じさせる作品ごとの完成度が魅力です。

特徴②世界観の描写

上に挙げた文章力に付随して、小川洋子作品はその世界観がとにかく綺麗です。

多彩な比喩表現や精巧な風景描写、文章のバランス感覚によって、決して軽い読み心地ではありませんがすっと物語世界に自分自身が溶けいるような読書体験ができます。

小説を形作る一文字一文字の緻密さも相まって、小川洋子の小説は個人的に絵画を見るような感覚を想起させます。

小川洋子の小説は怒涛の展開で魅せるようなエンタメ性は少なく、世界観の美しさやテーマ性を楽しむ作品が多いです。

小川洋子のおすすめ小説一覧

以下で紹介する小説はこの4冊。

  1. とにかく代表作を読んでおきたい人→『博士の愛した数式』
  2. 短編で小川洋子小説を試したい人→『妊娠カレンダー』
  3. 文章の美しさを体感したい人→『猫を抱いて象と泳ぐ』
  4. 世界観の美しさを体感したい人→『密やかな結晶』

順番に見ていきましょう。

小川洋子のおすすめ小説①『博士の愛した数式』(代表作が読みたい人へ)

[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

あらすじ

80分しか持たない数学博士の物語。

本屋大賞の記念すべき第一回大賞受賞作、映画化もされた作品で、タイトルは知っている、この作品だけ読んだことがあるという人も多いのではないでしょうか。

文章の美しさ、世界観の美しさ、読者に訴えかけるテーマ性と、小川洋子の魅力がすべて詰まった作品で、最初におすすめできる小説です。

登場人物たちの純粋な心に癒されます、、、

小川洋子のおすすめ小説②『妊娠カレンダー』(短編を読みたい人)

姉が妊娠した。つわりに苦しみ、家族に八つ当たりし、 母となる不安に苦しむ姉と接するうち、妹の心に芽生える不思議な感情。姉を苦しめるモノから姉を妹は守りたいという気持ちと裏腹に、妹はやがて、めまいのするような悪意の中へすべりこんで行く。出産を控えて苦しむ姉の傍らで、妹は鍋でジャムを混ぜる、その中には、ひそかな「毒」が。家族の妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを、きらめく言葉で定着した芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ジミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三編の小説。

あらすじ

芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」を含む3篇の短編集。

『博士の~』から入った人は意外に感じるかもしれませんが、この小説は全編通して不穏な空気が流れる、闇を感じる作品になっています。しかしこの闇もまた小川洋子の真骨頂、、、!

僕はやはり表題作の「妊娠カレンダー」がお気に入りなのですが、この作品に限らず小川作品は登場人物の心情、行動の動機、結末等をすべて描写しきらない傾向があり、読者に考える余地を与えられているのも好きなポイントです。

小川洋子のおすすめ小説③『猫を抱いて象と泳ぐ』(文章の美しさを体験)

「大きくなること、それは悲劇である」。少年は唇を閉じて生まれた。手術で口を開き、唇に脛の皮膚を移植したせいで、唇に産毛が生える。そのコンプレックスから少年は寡黙で孤独であった。少年が好きだったデパートの屋上の象は、成長したため屋上から降りられぬまま生を終える。廃バスの中で猫を抱いて暮らす肥満の男から少年はチェスを習うが、その男は死ぬまでバスから出られなかった。成長を恐れた少年は、十一歳の身体のまま成長を止め、チェス台の下に潜み、からくり人形「リトル・アリョーヒン」を操りチェスを指すようになる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。静謐にして美しい、小川ワールドの到達点を示す傑作。

あらすじ

天才チェス少年の生涯を描いた一冊。

一文一文すべてを額縁に入れて飾りたいほど綺麗な言葉で埋められていて、小説を好きでよかった、、、!と心から思える作品です。

特にチェスの対戦描写が圧巻で、駒たちの複雑な動きを比喩で美しく表現しきっていて、小川さんは日本一の日本語の使い手なのでは!!?と感じてしまいました。

小川洋子のおすすめ小説④『密やかな結晶』(世界観の美しさを体験)

その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。

あらすじ

2020年に、英訳版が英ブッカー賞に日本人で初めてノミネートされた、傑作。新装版が出ており、書店で見かけた人も多いのでは。

徐々に「もの」と「記憶」が消えていく島が舞台という、ディストピア系SF小説になります。

表紙に惹かれた方にはぜひチェックしてほしい小説で、設定もさることながら、管理?された世界に暮らす人々の諦念感、無情感が小説全体にしみわたっており、その中で起こる「消滅」の美しい描写や感情の揺れ動きが、まさに宝石のように淡く光って感じ取れます。

本を閉じた後にはため息を吐かずにいられない、そこまでのめりこんでしまう小説です。

まとめ

小川作品のとっかかりとしておすすめ4冊を紹介しました。

ぜひ、お気に入りの一冊を見つけてみてください!