M-1グランプリは年末の風物詩です。
お笑いファンの方々、そうでない方々も、M-1当日はテレビの前で
その結果を見届けるのではないでしょうか。
『言い訳』という本が今年話題になりました。
2018年のM-1で審査員を務めたナイツ塙が、持論をもとに過去のM-1、直近のM-1を振り返る、ありそうでなかった「M-1批評本」。
M-1グランプリを見たことのある人なら必読の本です。
本の構成
テンポのいいQ&A方式
この本はQ&A方式で進んでいきます。
インタビュアーが出す質問に、塙さんがそれぞれ4~5ページの文章で答える。
そのため、全体的にテンポがよく、スラスラ読み進められる構成です。
内容
語られる内容としては以下の感じ。
- M-1グランプリという大会の特徴(「関東芸人はなぜ勝てないか?」)
- 初期M-1の様相評、後期M-1の様相評
- M-1を彩った漫才師評
- ナイツのM-1挑戦記
- 2018M-1グランプリ評
盛りだくさんの内容で、お笑いファンでもおなか一杯になれるボリュームです。
個人的にスゴイと思ったのがマーカー部分。
後述しますが、インタビュアーの質問がホント優秀で、評価を聞いてみたい芸人を全部聞いてくれています。
要約!
この本は密度がとても高いので全部の内容を紹介することはできませんので、
個人的に面白かった部分を要約します。
関東芸人はなぜ勝てない?
この本の副題にもなっているこのテーマ。
この本は、「関東芸人はM-1で勝とうと思わないほうがいい」という塙さんの持論から始まります。
彼の考えによるとその理由は「関西芸人のしゃべくり漫才の強さ」。
コント漫才よりも王道を行くしゃべくり漫才は、いわば「日常会話」。
ここで勝負しようとすると、日常に「しゃべくり」が溶け込んでいる関西人には、なかなか勝てないといいます。
加えて、第一回王者の中川家が完ぺきな「しゃべくり漫才」で優勝したことで、M-1自体に「しゃべくり漫才」の色がついたことも要因としています。
審査基準
塙さんの審査基準は「印象重視」だそう。
フィギュアスケートのように明確な基準がない以上、「ウケ量」だったり「感動」のような空気で優劣を決めているそうです。
(あくまで審査員の基準は人それぞれでしょう。大吉先生は独自の基準を設けて採点方式をとっていました)
前回の優勝者・霜降り明星も、技術でいえば和牛やジャルジャルに劣るが、当日の「ウケ量」が圧倒的だった、と評しています。
漫才の技術論
誰もが認める漫才師・ナイツ塙の漫才技術論も満載です。
- 漫才の理想形はボケ・ツッコミ・客席の「三角形」(ブラマヨが典型)
- M-1は「100m走」
- 「自虐ネタ」の良しあし(上沼恵美子がミキを許してギャロップを斬った理由)
など、的確でためになる理論ばかりです。
塙の漫才師評
個人的にこの本一番の見どころと思っているのが、塙さんの「漫才師評」。
このコンビはここがスゴイ、このコンビはこの点が失敗してしまった、等、過去のM-1で名をはせた漫才コンビほぼ全組を評価しています。
これに関しては質問しているインタビュアーの方も優秀で、
- 「かまいたちが思ったより評価されないのはなぜでしょう」
- 「ジャルジャルの漫才はどう評価しますか」
- 「もし海砂利水魚がM-1に出ていたらどうですか」
- 「オードリーの漫才は発明的でしたね」
など、読者が聞きたいことを全部聞いてくれています。
言及のある漫才師は?
ちなみに、『言い訳』のなかで数ページを使って評価している漫才師は以下。
霜降り明星、和牛、ジャルジャル、中川家、ハリガネロック、キングコング、NON STYLE、ますだおかだ、おぎやはぎ、テツandトモ、スピードワゴン、スリムクラブ、ギャロップ、ミキ、トレンディエンジェル、スーパーマラドーナ、ゆにばーす、とろサーモン、ブラックマヨネーズ、フットボールアワー、かまいたち、アンタッチャブル、ハライチ、くりぃむしちゅー、爆笑問題、サンドウィッチマン、パンクブーブー、笑い飯、三四郎、チュートリアル、マジカルラブリー、トム・ブラウン、南海キャンディーズ、オードリー、カミナリ
とんでもない数です。数行程度の登場だったらもっと増えます。
おわりに
ナイツ塙の『言い訳』はお笑いファンなら必読の名著です。
今年のM-1グランプリでも塙さんは審査員を務めるそうですね。
M-1グランプリのお供にいかがでしょうか。ガイドブックとして、楽しめると思います。