日本語というのは、日本人ならば誰もが日常で触れ合う言語であり、程度の差はあれどみんな多少は興味を持つものです。
という感想を誰もが一度は抱いたことがあるのではないでしょうか。
今回は大学で日本語学を専攻していた筆者が学生時代に読んだ、
日本語の面白さにハマるおすすめ本を紹介します。
Contents
①『日本語』金田一晴彦
という人にはこれが一番おすすめ。
岩波新書上下巻からの武骨なタイトル。ちょっと身構えるかもしれませんが、日本語の面白いところが全部詰まっている本。
5000~8000ほどあるといわれている世界の言語の中の一つとしての「日本語」、その特性をたっぷり解説しています。
日本語の歴史、文法の特徴、漢字の利便性、縦書きの特異性、豊富な語彙分野、敬語の使い方、発音方法など、、、、、、、
全600pのボリュームにふさわしい網羅性で、まず最初に読んで損はない本。
日本語をもっと知りたくて、ボリュームのある本に抵抗がないならこの本が最適解です。
②『日本語雑記帳』田中章夫
上の『日本語』はちょっとしんどそうだな・・・なんか違うな・・・と思ったならこれがおすすめ。
同じ岩波文庫ですがこちらはもっと楽しく読める本です。
理由は2つ。
1つは単純に文章が平易なこと。エッセイに近い文体でスラスラ入ってきます。
もう1つは、より日常で感じる「日本語の面白さ」に近い部分を取り扱っているからです。
若者言葉や方言など、ぼくたちが日常で「あ、日本語って面白いな」と感じやすい部分にスポットを当てているので、共感性は高いと思います。
図解も豊富で読みやすく、だれが読んでも楽しめるスゴイ本です。買って間違いはありません。
③『国語辞典の遊び方』サンキュータツオ
『日本語雑記帳』よりもっとユルイ本。
著者は芸人 兼 日本語学者のサンキュータツオさん。
いろんな出版社の国語辞典を比較してそれぞれの良さを語りつくすという奇天烈な一冊です。
こんなニッチな内容でも面白いのは芸人の筆力か、国語辞典の魅力なのか。
『マツコの知らない世界』的魅力があり、はじめはどれも同じに感じていた国語辞典も、熱のこもったプレゼンを読んでいくうちにだんだん個性が見てて来るのが不思議です。
『舟を編む』が好きな人なら必読。
④『レトリック感覚』佐藤春夫
比喩や誇張法など、いわゆる「レトリック」を学術的に研究した、その道ではめっちゃ有名な本。
文章は緩くはないですがわかりやすく、興味のある人なら面白さで鼻息荒くしながら読み切れちゃうくらいのレベルです。
直喩・隠喩はもちろん、提喩・換喩などの聞きなれない比喩(「赤ずきんちゃん」も比喩!)、バカに向かって「賢くないね」とわざわざ言う緩叙法など、それぞれの効果やメカニズムを解説するだけでなく、
「そもそもなぜレトリックが生まれたのか?」の根本的な問題にもお答えしているマニア向け本。
このテーマにびびっと来る人は多くないでしょうが、一定数いるんじゃないかな。。。
⑤『気持ちをあらわす基礎日本語辞典』森田良行
日本語の「語彙」に面白さを感じる人向け。
森田先生の大作『基礎日本語辞典』から「気持ち」に関する語を抜き出して再編集した文庫本。
収録語は「うれしい」「うらむ」「どうやら」「まさか」「せっかく」などバラエティに富んでます。これらの語の意味を説明できますか??
一般的な国語辞典と一緒にしたら大間違いで、この本のすごいところはその分析量にあります。
「恐ろしい」一つとっても、「恐ろしい」の語が持つ意味(対象に対して身がすくみ、逃げ出したくなるような気分)に加え、どのような場面で「恐ろしい」が起こるのか、「怖い」との違いは何か、「恐ろしく速い球」などの強調表現の効果など、語の隅から隅までを解説し尽くします。
国語辞典を読み込んでしまうタイプの人にはたまらない本です。シリーズ化もされているのでぜひ
⑥『言語学の教室』野矢茂樹、西村義樹
哲学者が言語学者に「認知言語学」を学ぶ本。
「認知言語学」ってのは超ざっくり言うと、「言語学に心の要素を入れた学問」。
例えば、「雨に降られた」「帽子が風に飛ばされた」とかは言えるけど、「財布に落ちられた」は言えない。これなんで?とか。
「鳥」と聞いてペンギンを真っ先に思い浮かべる人がいないのは不自然じゃない?とか。
言語学って意外と科学的・理論的に研究を進めることが多いんですけど、それじゃ解決しにくい問題に対し「人の心」からアプローチしてみよう、というのが認知言語学。
この本は野矢さんと西村さんの対話形式になっており、生徒役の野矢さんがかなり容赦ない質問をしているのでわかりやすく、かつ深みまで届いた内容になっています。
この本も日常会話に近いケースが多く扱われていてなじみやすいです。個人的には一番好き
⑦『ここから始まる日本語文法』森山卓郎
最後は普通の学術書を出してしましました笑
とはいっても内容はすっきりしていて、下手な新書よりかは読みやすいです。
「日本語文法」ということで、「へ行く」「に行く」の使い分け、シテイル系の複雑さ(「散っている」は現在?過去?)など、日本語をつかって「あれ?ムズイな」と一度は考える問題について深く切り込んでいます。
僕が印象深いのは「ペンキ問題」。
- 壁をペンキで塗る
- 壁にペンキを塗る
この二つの文の違い、説明できますか?
さすがに初心者向けではないですが、日本語好きなら楽しめる本であるのは間違いないです。
終わりに
日本語は身近にあるから普段は意識されないけど、ふとした疑問に立ち止まるとその楽しさが見えてくるものです。
日本語を知ると自分の使う言葉、相手の使う言葉に気を使えるようになって会話の楽しみが増しますね。