健全な青年なら、誰でも一度は「哲学やりてえ」と思ったことがある。ご多分にもれず、僕もそうだ。
とはいえ、哲学をやる、といってもどこから手をつければいいのか分からない。「純粋理性批判」なんていきなり読めっこないし、かといって、概説書は分かったような分からないような、退屈な読書になる。
分かりやすくて、かつ面白い哲学の本はないのかなあ。
という気持ちで、話題のこの本を手に取った。
史上最強の哲学入門
単行本の時からすごく評判が良くて、気になっていた本。
これは。。。めっちゃ面白い!
哲学に興味を持ったら、まず第一に手に取るべき本だと思いました。
革命的な分かりやすさ
なにがすごいかって言うと、その噛み砕きかた。
哲学と聞いて想像するような堅苦しい文章ではなく、友達のようなフラットな文章で哲学者を描写していきます。
そして比喩も受け入れやすい。カッコつけずに、日常で「あるある!」と共感せざるを得ない事例を挙げてくれるので、身近に感じることが出来ました。
以下、デューイという哲学者の「道具主義」の説明。
たとえば、「人を殺したらなぜ悪いの?」は、はるか昔から多くの人によって議論されてきた問題であるが、いまだかつて明確な答えが導き出されたことはない。では、それはなぜかと言うと、デューイに言わせれば、「問題が難しいから」ではなく「問題の設定の仕方が悪い」のである。つまり、その問いかけを「人を殺したら悪い、という決め事はなんの役に立つの?」という道具主義的な問いかけに変えてやればいいのだ。そうすれば、答えを出すことも、客観的な議論も可能である。
たとえば、実際に、「人を殺したら悪い、という決め事がなかった」場合のことを考えてみればいい。そうすれば、どうなるか?おそらく、「いつ他者から殺されるかわからない」という状態になり、僕たちはおちおち夜道を歩くことも出来なくなる。それだと生活に支障が出るし、いちいち殺されることを心配しながら過ごすのは、全くリーズナブルなことではない。
入門のその先
この本のもう1つわかりやすいところは、哲学者をただ単純に時系列に並べるだけでなく、「真理」「国家」「神様」「存在」の大きなテーマに分けて、それぞれを時系列に並べて追っているところ。
ある哲学者がこう考えて、そこに別の哲学者がこう反論して、それらをまとめてこう昇華させて……
これによって、哲学の代表的テーマがどう進展していったかがすっと身に入る。
だけでなく、本当にすごいのは、それらの哲学が現在どういう形で存在しているかを突きつけられているということ。
つまり、この本はただ過去の哲学議論を紹介するだけの入門書に留まらず、その蓄積の道が、未来にどう向かっているかまで示している。
言い換えれば、「哲学はなんの役に立つの?」という問のひとつの答えになっている。
これは名前に違わぬ「史上最強の哲学入門」。
早く読んでおけばよかった。
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