川上未映子『夏物語』を読んだ人に、次に読んでほしい本をご紹介します。
僕的には、『夏物語』はテーマ性の強い作品であり、読了後しばらく胸にしこりを残す作品と思ってます。
なので今回は、そのしこりに共鳴したり、さらに揺さぶったりするものを選びました。
①『きみは赤ちゃん』(川上未映子)
『夏物語』を気に入った人には絶っっっっっっ対に読んでほしいと思う作品。
同じ川上未映子さんの、出産&育児エッセイです。
なぜお勧めするかというと、この本には『夏物語』で提起されたテーマ(命を産むこと、女として生きること)が作者自身のノンフィクションとして描かれているからです。
作中人物に「出産は親のエゴ」と言わしめた問題は川上未映子さん自身が考え続けている問題であり、未映子さん自身の出産を語るこの本でも、その悩みが綴られています。
彼女自身、新しい命を創造することに悩み、自身の体の変化に悩み、母親として生きていくことに悩んでいます。
彼女自身の妊娠・出産・育児を通した想いを理解すると、『夏物語』という作品が正真正銘・川上未映子の魂の一冊であることがわかります。
なので『夏物語』が好きな人には絶対に読んでほしい。
もちろんエッセイとしての面白さも折り紙付きで、柔らかな関西弁調でスラスラ軽く読めるのも魅力の一つです。
②『あこがれ』(川上未映子)
また川上未映子ですが、同氏の短編小説です。
(というか正直言うと、川上未映子という作家は小手先ではなく自身の魂を切り出して作品を産むタイプの小説家だと思うので、『夏物語』が好きならほかの川上未映子作品も大体ハマると思いますが。。。)
この『あこがれ』という作品を選んだ理由は、僕が『夏物語』のテーマの一つだと考えている「別れ」にフォーカスされた作品だからです。
『夏物語』では作中で大きな「別れ」の場面がありますし(念のためネタバレ配慮)、主人公・夏子と彼女を囲む登場人物の関係性は、いつ「別れ」が訪れるかわからない、不安定なものです。(一般の物語と違って、この物語の後に夏子とほかのだれかが二度と会わなくなる関係性になっても不思議ではないつながりの弱さを感じます。)
このような「別れ」の可能性を常に孕んだ不安定さが『夏物語』の魅力の一つだと僕は考えています。
『あこがれ』という小説は、『夏物語』でぼんやり描かれた「別れ」という問題を顕然化させた物語です。
多感な小学生の男の子と女の子が、「もうあの人に二度と会えないかもしれない」という子供には酷な問題に直面し、どうにかするために自分の頭で考え抜く話。
『夏物語』の全体の雰囲気が好みな人にはお勧めできる一冊です。
③『きれいなシワの作り方』(村田紗耶香)
最後は『コンビニ人間』『消滅世界』等で有名な村田紗耶香さんのエッセイ。
この本は、「女性としての一生」が赤裸々に語られている作品です。
執筆時30代半ばで独身の村田さんは『夏物語』の夏子と重なるところがあり、女性特有の悩みについて軽く、しかし切実に描かれています。
特に「産むか産まないか」という『夏物語』と共通する問題は考えさせるものがあります。
身体のこともあり、世間体のこともあり。。。
「出産」というイベント、また女としての「美」が失われるまでの「タイムリミット」は男である僕の人生にはやっぱりないもので、女性の人生の難しさを感じずにはいられませんでした(軽々しいですが。。。)
『夏物語』を「女性の物語」として読んだ人には強くお勧めしたい本です。
純粋にエッセイとしても面白く、クレイジーな村田紗耶香節が光りまくりで声を出して笑える一冊でもあります。
おわりに
今回は三冊だけの紹介でしたが、どれも強くお勧めできる本なので、
『夏物語』が好きな人はぜひ手に取ってみてほしいです。