こんな人におすすめ
- 綺麗なものが好きな人
- この書影に惹かれた人
- コーヒーゼリーに関心のない人
僕は物心ついたときから本を読むのが好きで、多読家というわけではないけれど、今までいろんな種類の本を読んできました。
その中で、自分の価値観を大きく揺さぶられた本として、記憶に残っている本です。
「コーヒーゼリー」だけの本。日本のコーヒーゼリーの名店を集めた本です。
あまりにニッチすぎる。
本の世界は広いなあ。
別に僕はもともとコーヒーゼリーが好きだったわけじゃありません。
かといって嫌いでもない。コーヒーゼリーが「好き/嫌い」のライン上にそもそもなかったんです。
たぶん、多くの人がそんな感じかな、と思います。(こんなこと言ったらコーヒーゼリー愛好家に怒られそうだけど)
コーヒーゼリーに関心がなかった僕がなぜ「コーヒーゼリーの時間」なんて本を買ったのか。
ひとえに、表紙のコーヒーゼリーの美しさに惹かれたからです。
すごくないですか、これ。
綺麗すぎないですか?
黒と白のコントラスト。ドレスをまとったような上品さ。
このコーヒーゼリーに得も言われぬ「美」を感じ、じっと見とれてしまいました。
あまりの衝撃に即購入。美しい、張りつめた雰囲気をまとったコーヒーゼリーがたくさん載せられていて、いつの間にか読み切ってしまいました。
「読んだ前後で価値観が変わる本」は意外と少なかったりする。
読んでる最中は「うわ、すげえ!価値観変わるわー!」とか思ってても、一週間後には忘れてたりする。一年後にはカケラも残ってなかったりすると思います。
その中で『コーヒーゼリーの時間』は僕の中で珍しく、『価値観を変えられた本』でした。
え、この本が?と僕も思います。純文学とか、名作小説とかじゃなくて?
しかしこの本は僕を確実に変えました。この本を3年前に手に取らなかった人生は、今の人生と別物になっていたと断言できます。
どう変えたか?
まず一つは、コーヒーゼリーが好きになりました。
実際にこの本に載っていたお店に行って、コーヒーゼリーを食べてみると、かなりはまっちゃいました。友達も一緒に連れて行って、やっぱりはまってくれました。
いろんなコーヒーゼリーを食べてみると、やっぱり違いも分かるようになってきました。市販とお店じゃやっぱ違うし、お店によって苦みのあるゼリー、酸味の強いゼリー、様々で、頼むたびにワクワクが尽きません。
もう一つ、この本で変わったことは、物事に潜む「美しさ」の存在に気づいたことです。
僕はこの本からコーヒーゼリーの美しさを教わりました。コーヒーゼリー=美しいと初めて結びつきました。
しかし別に、僕は初めてコーヒーゼリーを見たわけじゃありません。それまでもコーヒーゼリーは沢山食べてきたし(通算だと100回くらいは食べてると思う)、もちろんたくさん見てきました。
ただこの本と出会うまでは、その美しさを知らなかった。この本を読んだ後に見るコーヒーゼリーはどれも美しく見えたんです。
コーヒーゼリーはもともと美しさを秘めていたけど、それを僕は見ていなかった。
今までの僕はコーヒーゼリーを「記号」としかみていなくて、その本質を見ようとはしていなかったんです。
そしてそれは、コーヒーゼリーに限った話ではなく、世の中の事物すべてに共通することだと思います。
僕たちは普段世界の色々を記号として見ている。それらすべてを細部まで理解しようとすると脳がパンクしちゃうから、ある程度のステレオタイプにあてはめて処理しながら世界をとらえています。
しかしそれを世界と思ってはいけない。それは自らの脳で変換された「デフォルメされた」世界であり、本質はその陰に隠れているからです。
世の中の本質をすべてつかむことはできない。誰しも主観の眼鏡をかけて、都合よく変換された世界を見ることしかできません。
しかしそのことに自覚的になることで、世界の本質をちらりと覗くことはできるかもしれない。
僕がコーヒーゼリーの美しさに気づいたように。
コーヒーゼリーの話から、世界の話になってしましました。
とにかくこの本はほんとにきれいなので、ぜひ買ってみてください。
コーヒーゼリーが好きでも嫌いでもない人に、お勧めです。